効率的に蒸気をご利用頂くために
蒸気とは水蒸気の略で、水をボイラーなどで加熱・気化させたものです。蒸気は無味、無臭、無色の気体です。空中にブローした時、白く見えるのは空気と接 触して冷却され一部が水滴となる為です。通常使用される蒸気は少量の凝縮液が 混ざった飽和蒸気の状態で、冷却されると、温度が変らずに、凝縮します。つまり同じ温度の蒸気と熱湯の混合物となります。飽和蒸気で加熱容器内の製品を加熱すると、加熱量に見合う蒸気が凝縮し、ドレン(熱湯)となります。飽和蒸気の温度は水の沸騰温度と同じで、圧力により決まります。ゲージ圧力0MPa(大気圧)なら100℃です。ゲージ圧力0.196MPa(大気圧)の場合133℃、0.294MPa(大気圧)の場合143℃です。蒸気が熱源として最も一般的に利用される理由には、熱を伝える物質として、物理的、化学的性質に優れ、経済性も優れていることが挙げられます。
蒸気加熱の特長
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1.熱量が大きく効率が良い
加熱条件にもよりますが、蒸気加熱は一般的にガス加熱よりも加熱(伝熱)量が格段に大きく短時間で所定の加熱が可能です。更に、燃料(一次エネルギー)ベースの熱効率も80~90%という高い値を有しています(ガス加熱の場合、放熱が大きく、25~30%という低い効率が一般的です)。
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2.ガス加熱・電気加熱・電磁誘導加熱(IH)などに比べると管理が容易
蒸気は腐食性がなく、化学的安定性に優れ、引火の危険がありません。また比較的低コストで容易に多量の蒸気を得ることができます。
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3.圧力を制御することで加熱温度のコントロールが可能
前述したように、蒸気温度は圧力で決まるため、減圧弁などで、供給蒸気圧力を調整することにより、蒸気温度(=加熱温度)を精度よく制御できます。また、流量調節弁(PID制御)、電磁弁(ON・OFF制御)などによる、加熱(蒸気)温度の自動制御が可能です。
蒸気を使用する場合の注意事項
前日の機械使用時に機械や配管内に入っていた蒸気が冷やされ機械や配管内にドレンが溜まります。ドレンが溜まったまま蒸気を供給すると、昇温が遅いだけでなくウォーターハンマー(下記参照)が起こる可能性があります。毎日の機械の使用前に、ドレン抜きバルブを開け必ずドレンを抜いて下さい。
※ドレン除去が不十分であると管底のドレンの液量がだんだん高くなり、ついには管の頂点に達し、ピストン状になったドレンが蒸気に押されて高速度で進行します。これが弁や管曲り部に出会うと衝突して大きな音と振動を生じます。この現象をウォーターハンマーと呼んでいますが、これは騒音ばかりでなく継手類のゆるみを生じさせて漏れを生じたり、弁を破壊することもあります。
※供給圧力を減圧弁で落とす場合は、できるだけ機械の直前に減圧弁を取り付けて下さい(蒸気が配管内を通る時に圧力が下がっていきます。減圧弁を機械の直前に付けることで安定した蒸気供給が可能です)。また、ボイラーの後に蒸気ヘッダー、機械の前後にスチームトラップを取り付けることをお勧めします。
飽和蒸気表(圧力基準)
加熱容器で使用している圧力はゲージ圧力といいます(大気圧状態での圧力を0として測定する圧力)。これに対して絶対真空を0として測定する圧力を絶対圧力と呼び、ゲージ圧力とは区別されます。
絶対圧力(MPa)=大気圧力0.098MPa+ゲージ圧力(MPa)
(2007年3月31日)