森下典子 エッセイ

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2003年8月―NO.11

  


上質の素材を使って
丹念に作られた羊羹の味は
すぐにそれとわかるのである

八木菓子舗の「元祖 三石羊羹」

ブルドックソースの「ブルドックとんかつソース」
(画:森下典子)

 多種多様な香辛料、野菜やフルーツ。それらから滲み出た滋味と刺激と香りが合わさり、「ソース」という茶色い液体の味になっている。それはもはや、何と何の味とは見分けがつかず、ただ、むやみにいい匂いを放ち、とろりと光って、刺激の中に甘ささえ漂わす。
 私は「ブルドックソース」の見慣れた容器を、おっとりと眺めた。子供の頃から、ソースはずっと、これだった。ラベルのデザインは多少変化しているような気がするが、ブルドックの顔の絵は、昔と変わらない。
 何気なく、キャップのところを見ると、
「おかげさまで100周年」
 というシールが目に入った。
(へぇ〜、ブルドックソースって、そんなに昔からあるんだ)
 それから、容器の後ろをひょいと見た。
「お、」
 そこに、ブレンドされた香辛料の名前が、かわいい絵と一緒に紹介されていた。
「シナモン クローブ ローレル フェンネル タイム セイジ 唐辛子」
 子供の頃からずっと見てきたのに、この絵に初めて気づいた。きっと、日本人にとってハーブやスパイスが身近になってきたので、最近、こういうラベルにしたのだろう。

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