「シウマイ弁当」を食べる時、 自分の幸福の配分について、 考えているのかもしれない
崎陽軒の「シウマイ弁当」
崎陽軒の「シウマイ弁当」 (画:森下典子)
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私はハマっ子なので、もの心ついた時には、もうシウマイ弁当を食べていた。旅行の時だけではなく、しばしば家でも食べているから、たぶん、百食以上食べてきたと思うが、このご飯が実にうまい。飯粒が一粒一粒光っていて、冷めてもちゃんとおいしいのだ。それが、茶畑のように畝になっていて、畝ごとに黒胡麻がふってあり、小梅が一粒乗っている。
折の中は、ご飯とおかずの部屋が、ご飯4、おかず6くらいの面積に区切られているが、この配分は、
「うちのは『シウマイ弁当』と言っても、シウマイだけじゃなく、いろいろなおかずが入っている。その多彩な味を楽しんでもらいたい」
「いや、おいしいおかずを食べれば、おいしいご飯が欲しくなるものだ。自慢のおいしいご飯もたっぷり食べてもらいたい」
ご飯側とおかず側、双方譲れない一線のぎりぎりのせめぎあいの中から生まれたバランスなのだろう。
とにかく、シウマイ弁当のおかずの部屋は、限られたスペースの中に実に盛りだくさんである。なんたって主役のシウマイ5個。崎陽軒のシウマイは、「ホタテの貝柱を使っている」とかで、本当に冷めてもおいしい。そして主役に劣らぬ存在感の、鮪の照り焼き一切れ。カリッと揚がった香ばしい鶏の唐揚げ一個。かまぼこ一枚。味のよく染みた賽の目切りの筍煮。レンコンの炒めもの二枚。甘酸っぱいあんず一個。
小さな容器に小分けした醤油とカラシもちゃんと付いている。
おかずの部屋の片隅には、小さい三角に仕切れた付け合せのコーナーがあって、そこには、桜漬と細切りの生姜、それに切り昆布の佃煮が添えられている。
わずかハガキ一枚ほどの敷地の「おかずの部屋」に、主役、準主役が並んでいる。蒸し物、煮物、焼き物、炒め物、揚げ物と揃っている。途中で、気分を変えるための、名脇役の漬物や佃煮。それにあんずというデザートまで付いている。シウマイ弁当は、その中だけで充足できるように作られた一つの「小宇宙」なのだ。
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