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![]() 身近な生活の中のおいしさあれこれを1ヶ月に1度お届けします 森下典子  | 
  
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| 2005年10月―NO.36 | |||||
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 淡雪のように消える上品な甘さも、明け空の月のように、はかない。 断面にボツボツとあいた穴の影を、じーっと見ていたら、しだいに、満月の表面の、幻想的な景色に見えてきた。 「サクサク」と、齧れば、たちまち消えて行く、こんなささやかなお菓子によって、想像力が無尽に広がる。世の中には、舌や胃袋でなく、心を満たしてくれるお菓子があるのだ。 そういえば、去年の夏、旅行先のフランスで、街を歩いていたら、カフェのガラス越しに、モコモコとした雲のような塊を見た。近づいてみると、メレンゲである。 搾り器から、にょろりと搾り出された形で、1つ1つが、丼鉢ほどの大きさがあり、3つ買ったら紙袋からあふれた。 「ガリガリッ!」 と、齧ると、中が軽石状である。1つ食べ終わったところで、甘みに飽き飽きし、頭の中がキーンとなった。 メレンゲ菓子に「月」を見ることのできる日本人の感性は、人類の宝だと思った。  | |||||
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