身近な生活の中のおいしさあれこれを1ヶ月に1度お届けします 森下典子 |
2011年5月―NO.100 絵画も文学も音楽も、 大人にならなければわからないものがあるように、 大人にならなければわからない和菓子がある。 松栄堂の「田むらの梅」 | |||||
2011年4月―NO.99 パリパリとはじける皮の中から、 ふわんと香る胡麻の風味…… 白松がモナカ本舗の「白松がモナカ」 | |||||
2011年1月―NO.98 今の日本は、居ながらにして 世界中のおいしいパンが食べられる美食の国だ。 その出発点に、あの元町ポンパドウルの、 熱々のバゲットの、 ピキッ、ピキッと皮の爆ぜる音があった気がする。 ポンパドウルの「デニッシュペストリー」 | |||||
2010年12月―NO.97 ねっとりとした甘みと豆の味が、 舌の味蕾を通過して体に染み渡った。 両口屋是清の「干支羊羹」 | |||||
2010年11月―NO.96 干し柿のねっとりとした濃厚な味と、 栗きんとんのもそもそとした素朴な甘みが、 口の中で混じり合う……。 満天星一休(どうだんいっきゅう)の「杣の木洩れ日」 | |||||
2010年10月―NO.95 むっちり、もっちりと噛みごたえがあり、 西京味噌の香ばしい甘みやほのかな塩気、 ゴマの風味が口の中で混じり合って、 優しさに包まれ、うっとりとなった。 松屋常盤の「味噌松風」 | |||||
| 2010年9月―NO.94 台風の夜に食べた缶詰の味は忘れられない。 ノザキの「牛肉大和煮」、 あけぼのの「あけぼのさけ」
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2010年8月―NO.93 記録的な猛暑の続くこの夏、 ワンタンの、あのちゅるんとした皮の感触が、 私は無性に恋しい。 東京ワンタン本舗の「ワンタンの皮」
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2010年7月―NO.92 どうしても忘れられない「皿うどん」がある。 蘇州林の「皿うどん」
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2010年6月―NO.91 私は、自分が水羊羹の中にいるように感じた。 菊家の「水羊羹」
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2010年5月―NO.90 その記憶のせいだろうか。 私は今でも、関西風のお好み焼きを食べる時、 頭の奥で、「こんにちはーこんにちはー」と、 三波春夫の歌声を聴く。 大阪万博の「お好み焼き」 (日清フーズの「フラワー 薄力小麦粉」)
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2010年4月―NO.89 元祖・インスタントラーメンは、 青春の下宿屋の味がする。 日清食品の「チキンラーメン」
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2010年3月―NO.88 粒々がしっかりしていて、 先にふわんと日本酒が香り、 それからピリッと辛く、 そして最後にほのかに柚子が香るのだ。 やまやの「辛子明太子」
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2010年2月―NO.87 白餡の上品な甘さと共に、 日本の美意識の豊かさに心が満たされる。 三英堂の「四ケ村」(しかむら)
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2010年1月―NO.86 マネケンの「ベルギーワッフル」ができ、 日本にワッフル・ブームが起こった。 今では、誰もがワッフルを知っているし、 食べたい時いつでも食べることができる。 マネケンの「ワッフル」
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2009年12月―NO.85 辛い時、苦しい時、 あの幸せな瞬間の記憶が、「生きていく力」になってくれる。 森永製菓の「ホットケーキミックス」
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2009年11月―NO.84 生醤油とやげん堀の七味がかかっている。 そりゃあ、とまらないのはわかっている。 また罪深いものを知ってしまった……。 よ兵衛の「生醤油唐辛子」
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2009年9月―NO.83 子供の頃は苦手だったのに、 今はピカピカ光る「半殺し」のもち米と 甘い餡子の組み合わせが、体にしみる。 サザエ食品の「十勝おはぎ」
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2009年8月―NO.82 これが「わらびもち」なら、 私が今まで食べてきたのは なんだったんだろう? こ寿々の「わらびもち」
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2009年7月―NO.81 起きぬけのカレースープの味は、さわやかな刺激である。 頭皮にじんわりと汗がにじむ。 軽く興奮したように頭の芯がカーッとし、 くっきりと目が覚める。 思いなしか、いつもより「やる気」が出る気がする GABANの「手作りのカレー粉セット」
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2009年6月―NO.80 京都からわざわざやってきた、 手のひらで包めるほどの小さい世界。 蛍の光が照らす範囲の小さな美の世界の、 この充実感はなんだろう。 末富の「沢辺の蛍」
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2009年5月―NO.79 口に入れると、 もっちりとした外郎の触感と、 黄身餡のまろやかな甘さが混じり合い、 目にも舌にも、豊さが広がる。 塩瀬総本家の「びわ」
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2009年4月―NO.78 口に入れると、葛がひんやりとし、うっすらと甘い。 なめらかに口どけして、すーっと消える。 日本の初夏の冷たい葛菓子である。 美濃忠の「初かつを」
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2009年3月―NO.77 鯛焼きって、なんでこんなにうまいんだろう。 どら焼きも、今川焼きも、人形焼きもあるのに、 なぜか鯛焼きでなくてはダメな時があるのだ。 不思議だ……。 新世界の「鯛焼き」
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2009年2月―NO.76 風土が生み出した和菓子は、 こんなにも洗練されている……。 五郎丸屋の「薄氷」
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2009年1月―NO.75 なんだろう、この安堵感。 埋まり込みながら、 顔がすっかり緩んでしまうのだ。 まい泉の「ヒレかつサンド」
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2008年12月―NO.74 奥の奥から、深〜い味がわいてきて、 心と脳に沁みていく。 感情のようなさまざまな味と香りが、 分かちがたく混じり合う。 近為の「味噌たくあん」
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2008年11月―NO.73 さらさらした卵風味の黄身餡が、 極上の小豆餡と口の中で混じり合い、 そこに栗の味と歯触りが入り混じる。 この調和……。 大吾の「爾比久良」
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2008年10月―NO.72 私と母は、半口食べて、初めての味と触感に、 思わず顔を見合わせ、一斉に言った。 「うわーっ!」 「おいしー!」 ちもとの「八雲もち」
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2008年9月―NO.71 さらさらとした、なんてきれいな味だろう! 餡をどれほど丹念に晒せば、この「さらさら」になるだろう きめ細かい舌触りを追いかけるように、 ちょっと遅れて、小豆の風味がやってくる 山田屋の「山田屋まんじゅう」
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2008年8月―NO.70 十勝産の小豆を丹念に晒したという餡子は サラサラとして、甘味も抑えられ、実にさっぱりとしている 口の中に、小豆の風味が豊かに香った 徳太樓の「きんつば」
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2008年7月―NO.69 これを1粒頬張ると、ほどよい酸味とまろやかな甘みに、 こんこんと新鮮な唾液が湧き、 深い旨みの境地に連れて行かれる 梅いちばんの「黄金漬」
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2008年6月―NO.68 愛知の麺はデリケートである 芝安の「梅・昆布うどん」
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2008年5月―NO.67 これらが食卓に並んでいたら、私は何も言うことはない 幸福は、虹の向こうや山の彼方ではなく、皿の上にある 魚久の「粕漬け」
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2008年4月―NO.66 一切れ全部食べ終わったら、 心がふわ〜んと大きな弧を描いて、 遠くへ飛んだ気がした 砂田屋の「酒ケーキ」
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2008年3月―NO.65 優しく滋味豊かな、 お豆腐屋さんの良心の味がした。 鎌倉小町の「豆乳パウンドケーキ」
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2008年2月―NO.64 人はこんなにささやかな飴菓子で、 豊かさを感じることがある。 九重本舗玉澤の「霜ばしら」
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2008年1月―NO.63 「京女みたいだ……」 前歯が薄いひとひらをサリッと噛むたび、 私はその薄さと繊細さに感動した。 大藤の「千枚漬」
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2007年12月―NO.62 どこをとっても本格的である。 これがあれば私はもう、 冬の夜、「鍋焼きうどん」食べたさに、悶えることはない。 キンレイの「鍋焼うどん」
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2007年11月―NO.61 なるほど、これは何もいらない。 醤油もネギも鰹節も邪魔になる。 豆腐って、そういうものだったのか!と、膝を打った。 太田豆腐店の「竹豆腐」
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2007年10月―NO.60 どら焼きが薄い、ということ自体、新鮮な食感だった。 皮も餡子も甘めだが、その薄さゆえに程がいい。 梅花亭の「どら焼き」
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2007年9月―NO.59 「んーっ!」 あたりから、驚きと溜息が起こった。 東北の秋の豊かさが、 このお土産に見事に凝縮されていた。 中松屋の「饗の山」
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2007年8月―NO.58 涼しさ、辛さ、酸っぱさ、甘み……。 歯ごたえにうなり、刺激を追いかけ、 過激から逃げて安らぎ、また麺をすする。 器の中でそれを繰り返し、 食べ終わった時の、えもいわれぬ涼やかな満足感……。 ぴょんぴょん舎の「盛岡冷麺」
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2007年7月―NO.57 この一粒の宝石を味わいながら、 顔をすぼめ、目を細め、 私は季節の幸せに、思わず微笑む。 源吉兆庵の「陸乃宝珠」
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2007年6月―NO.56 きな粉のざらざらと、 黒糖蜜のコクのある強い甘さが混じりあい、 それがやがて、ひんやりとしたくず餅の ぶりぶりとした冷淡な歯ごたえと 絡み合っていく 船橋屋の「くず餅」
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2007年5月―NO.55 これ以上引くものがないほど引き算をした麺である あえて究極の引き算で勝負したのには、 厳選した素材への自信と、強いポリシーが感じられる 雲仙きのこ本舗の「養々麺」
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2007年4月―NO.54 いっぺん食べたら忘れられない、 強烈なインパクトのおせんべい うまい餡子を食べた後は、 お茶の味が体にしみ入る気がする 柴舟小出の「柴舟」と中田屋の「きんつば」
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2007年3月―NO.53 この味は、忘れがたい。 ヘラにこびりついたごはんまで、 歯でこそいで食べたことは言うまでもない 木やだんごの「五平餅」と 木曽ごへ〜本舗の「ごへ〜餅」
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2007年2月―NO.52 あのチョコレートの畝の隙間に挟まったクルミを見ると、 懐かしさと同時に、ふっと合格発表の日の、 羽根の生えたような嬉しさを思い出す 喜久家洋菓子舗の「チョコレートケーキ」
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2007年1月―NO.51 真面目で素朴であることは、なんてすてきなことだろう 私は「鳩サブレー」に、由緒正しき焼き菓子の香りを嗅いだ 豊島屋の「鳩サブレー」
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