2007年5月―NO.55
これ以上引くものがないほど引き算をした麺である あえて究極の引き算で勝負したのには、 厳選した素材への自信と、強いポリシーが感じられる 雲仙きのこ本舗の「養々麺」
雲仙きのこ本舗の「養々麺」 (画:森下典子)
何年も前のことになる。日テレの番組「おしゃれカンケイ」で、「芸能人お取り寄せスペシャル」が放送された時、おいしいもの好きのタレント、渡辺満里奈さんが、不思議な素麺を紹介していた。 「熱湯を注いで、たった3分で食べられる」 というから、まるで日清のチキンラーメンみたいである。 司会の古館伊知郎さんが、細い麺をツルツルっと試食した。箸でつまんだ白くて細い、絹糸のような麺が、しなやかで美しかった。古館さんは麺をすすった途端、 (おっ?) という意外な顔をして、 「これは実にあっさりしていて、食欲のない時なんかにいいですねえ!」 と、言った。材料はすべて産地にこだわった無添加だという。その、 「ヨーヨーメン」 という一風変わった商品名を耳にして私は、チェリストのヨーヨー・マを連想した。 (中国系みたいな名前だなぁ〜) あの絹糸のような細い麺が一体どんな歯ごたえでどんな味なのか、心にかかったけれど、取り寄せるには至らぬまま、いつしか名前も忘れて時が過ぎた。 二年ほどたったある日、長崎を旅行した帰りに、空港の特産品売り場で、「養々麺」という茶色い袋を見かけた。 「ヨーヨーメン?」 ヨーヨー・マに似たその名に、どこかで覚えがある気がした。 (……あっ、テレビで紹介してたやつだ!) 手土産に買って帰った。 茶色い紙袋には、 「国内産小麦・長崎県崎戸島のいそしお 雲仙山麓の名水」 「枕崎産鰹・北海道昆布 本醸造醤油スープ付き」 などという文字が並んでいる。