2009年6月―NO.80
京都からわざわざやってきた、手のひらで包めるほどの小さい世界。 蛍の光が照らす範囲の小さな美の世界の、この充実感はなんだろう。 末富の「沢辺の蛍」
末富の「沢辺の蛍」 (画:森下典子)
木曜日、新宿タカシマヤの地下にある京菓子司「末富」の売り場に、季節の上生菓子が届く。その朝の作りたてをご主人が京都からわざわざ新幹線に乗って運んでくださるのだという。 6月の第3木曜日、「沢辺の蛍」という上生菓子をいただいた。緑色の餡を、葛でくるんだもので、模糊とした梅雨時の空気のような半透明の葛を透かして、緑色と、蛍に見立てた小豆がぼんやり見える……。