身近な生活の中のおいしさあれこれを1ヶ月に1度お届けします 森下典子
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2009年7月―NO.81

1  

起きぬけのカレースープの味は、さわやかな刺激である。
頭皮にじんわりと汗がにじむ。
軽く興奮したように頭の芯がカーッとし、くっきりと目が覚める。
思いなしか、いつもより「やる気」が出る気がする

GABANの「手作りのカレー粉セット」


20種のスパイス
20種のスパイス
(画:森下典子)

 イチロー選手は毎朝、カレーライスを食べているという噂を聞いた時、
「えーっ、朝からカレー?」
 と、言った。私はかなりのカレー好きだが、食べるなら昼か夜。起きぬけに、カレーライスをがっつりかきこもうとは思わない。去年の今ごろまではそう考えていた。
 しかし今、わが家の一日はカレーで始まる。毎朝カレーだ。数えてみたら、去年の秋から、かれこれ8か月……。
 きっかけは、雑誌で目にした記事である。
「カレーに含まれるターメリックの中のクルクミンという成分は、アルツハイマー病の予防に効果がある」
「!!」
 実はここ数年、急速に、会話の中に「あれ」「それ」が増えてきた。道でばったり会った知人の名前が思い出せないことがある。1つ「ど忘れ」すると、次から次へと「ど忘れ」が重なる……。77歳の母だけではない。まだ53歳の私も、である。
「この先どうなるんだろう」
 と、不安だった。
「カレーを食べると、脳の血流量がアップして活性化する」
 という話は、そういえば昔も聞いたことがあった。高校時代の同級生が、
「期末試験の朝にカレーを食べたら試験でいい点が取れたから、それから試験の朝はいつもカレーを食べてる。そうすると必ず成績がアップする」
 と、話していた。あれは、ただのジンクスではなかったようだ。
「市販されているカレー粉にも、15種類から30種類のスパイスが入っていて、それらは漢方で言う『生薬』だ」
 と、記事に書いてあった。つまり、カレーは究極の「薬膳」ということになる。
「せっかく脳の活性化を期待してカレーを食べるなら、一日の始まる朝がいい。ライスカレーでなくても、スープにカレー粉を入れ、味噌汁代わりに飲むだけでいい」
  という。

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