身近な生活の中のおいしさあれこれを1ヶ月に1度お届けします 森下典子 |
|
|||||
2006年1月―NO.39 | |||||
「いやぁー、さすがは伊勢の赤福だ」 | |||||
| |||||
「いっぺん、お伊勢さんに行って見たい」 という母を連れて、私は伊勢神宮の初詣バスツアーに参加した。大晦日の深夜に新宿を発って、途中、フェリーで伊勢湾を渡り、伊勢神宮に着いたのは元旦の午前中だった。 広い駐車場に、全国津々浦々からやってきたバスがすでにびっしり並んでいて、ドアが開くたびに、ツアーの旗を先頭にぞろぞろと善男善女が降りてくる。その人波に流されるように、私たちも大きな鳥居をくぐった。 無事、お参りをすませ、流れのままに帰り道を歩いていると、善男善女の行列はそのまま「おかげ横丁」へ続き、一軒の大きな店にぞろぞろと吸い込まれて行く。 大きな金文字の「赤福」という看板が目に入った途端、私と母は、思わずニヤッと顔を見合わせた。 盆に乗って、お茶と赤福3個が運ばれてきた。お茶の香ばしさと、赤福の上質な甘さに、バス旅行の疲れがすーっと消えた。 「いやぁー、さすがは伊勢の赤福だ」 と、どこかで父の声が聞こえた気がした。 | |||||
Copyright 2003-2024 KAJIWARA INC. All right reserved |