2006年11月―NO.49
舌がとろんとなり、それは、心までしみて、私はとろんとなった さいとう製菓の「かもめの玉子」
お茶を一杯 (画:森下典子)
最初の一口を頬張ったところで殻にヒビが入り、「かもめの玉子」が割れると、断面の真ん中に、鮮やかな黄身が現れた。 「へえー!」 味わってみれば、それは黄身餡であった。そして、黄身のまわりを囲んでいる、ふわふわした白身の部分はカステラである。 「かもめの玉子」を口いっぱいに、もぐもぐと味わうと、黄身餡のしっとりとした味に、カステラのふわふわが混じり合い、時々、それらを包むホワイトチョコレートの甘い口どけが、現れては消えていく。 お茶をすすった。黄身餡の甘みと、喉のあたりに残ったカステラが、さーっと流れ去った。 もう一個、包みを破り、ぽってりとした玉子を掌に載せ、白い殻を指で撫でた。 (かわいいなぁ〜。いい形だなぁ〜。もう一個、食べちゃおうか) それ以来、私は、岩手から来る親戚には、 「『南部せんべい』もいいけど、『かもめの玉子』って、おいしいよね」 と、それとなく言っている。