2009年2月―NO.76
鯛焼きって、なんでこんなにうまいんだろう。 どら焼きも、今川焼きも、人形焼きもあるのに、 なぜか鯛焼きでなくてはダメな時があるのだ。 不思議だ……。 新世界の「鯛焼き」
「ツノ」のおまけ (画:森下典子)
店の奥を見る。鯛の金型を焼いて、お玉で白いタネを流し込んで、そこに餡子を盛り、パタンと金型を閉じる。金型からブニュッとタネがはみ出す。はみ出したタネは挟まれたまま焼けて、鯛の姿を縁取る煎餅になる。 こういうはみ出た部分がとっても人を幸せにする。縁まで含めて見ると、鯛は丸々と太ってメタボである。時々、「鯛」じゃなくて「マンボウ」に見えることもある。 「新世界」の鯛焼きには、「ツノ」も付いている。鯛のオデコのあたりに、犀の角のような三角のツノがくっついているのだ。ポキンと折り取れば、すっきりとした「鯛」の姿になるが、このツノが、カリッとしていて実にうまい。時々、店員さんが、「ツノ」をおまけに2つ3つ、袋に入れてくれたりする。そのカリッカリに焼けた「ツノ」を齧ると、これが、まるで焼きたてのウェハスのように軽く、香ばしい。 去年、この「新世界」が、同じ仲見世通りにある10軒ほど隣の広い店舗に移転した。先日、その店先で、 「今年は鯛焼きが誕生して100年」 という張り紙を見た。そういえば、先日、テレビのニュースでも、 「今年は、空前の鯛焼きのブーム」 という話題を取り上げていた。それによれば、鯛焼きが誕生してこの100年の間に、大きなブームが2回あったのだそうだ。 最初のブームは大正12年、関東大震災後の不況のさなか。そして、2回目は昭和50年、オイルショック後の不況の時で、あの歴史に残る大ヒット曲「およげ!たいやきくん」が出たのも、この年だったという。 そして、3度目のブームが、100年に一度の経済危機の今だそうだ。 確かに、わが六角橋商店街の「新世界」の鯛焼きも評判になっているようで、店の前に行列ができている。 「鯛焼き 126円 上鯛焼き 168円」 お店の人に、「上鯛焼き」はどこが違うのかたずねたところ、 「皮は同じですが、餡子にコクがあります」 という答えが返ってきた。 私は126円の方の鯛焼きでも、十二分にうまいと思いますが……。