身近な生活の中のおいしさあれこれを1ヶ月に1度お届けします 森下典子
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2010年2月―NO.87

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白餡の上品な甘さと共に、日本の美意識の豊かさに心が満たされる。
三英堂の「四ケ村」


三英堂の「四ケ村」
三英堂の「四ケ村」
(画:森下典子)

 何年か前、デパートの全国銘菓のコーナーで、松江の三英堂という老舗の「四(し)ケ(か)村(むら)」という銘菓を見た。白椿の蕾が、ふっくらと膨らんで、わずかに開きかけた花びらの奥に、黄色い花芯がのぞいている。これに椿の葉っぱが一枚敷かれていて、なんとも心憎い演出だった。
 よくよく見ると、花びらの白餡の奥の、黄色い花芯の先には、かすかに金粉がついている。椿の最高に美しい瞬間を、目で堪能し、それからじっくり味わう……。
白餡の上品な甘さと共に、日本の美意識の豊かさに心が満たされる。

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