2010年8月―NO.93
記録的な猛暑の続くこの夏、 ワンタンの、あのちゅるんとした皮の感触が、私は無性に恋しい。 東京ワンタン本舗の「ワンタンの皮」
東京ワンタン本舗の「ワンタンの皮」 (画:森下典子)
私が小学生だった頃、母はちょくちょく家でワンタンを作ってくれて、私も皮を包むお手伝いをした。 ワンタンの皮は四角い。その真ん中に、青ネギのみじん切り、生姜、醤油、塩、胡椒などで味付けした豚の挽肉をチョイと載せ、皮に水をチョイチョイと付けて折りたたむ。 餃子の皮は丸くて、襞をきれいにつけながら包むけれど、ワンタンの皮は包み方が自由だった。わざと角と角をずらしてたたみ、あとはクシュっと丸めるようにしたり、テルテル坊主みたいな形に包んだこともあった。 そうやって母のそばでお手伝いしている時、ワンタンの皮を包装しているビニール袋のどこかに、いつも、 「東京ワンタン本舗」 という会社名が印刷されていたのが、記憶に残っている。 記録的な猛暑の続くこの夏、ワンタンの、あのちゅるんとした皮の感触が、私は無性に恋しい。