身近な生活の中のおいしさあれこれを1ヶ月に1度お届けします 森下典子
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2010年11月―NO.96

  3

干し柿のねっとりとした濃厚な味と、
栗きんとんのもそもそとした素朴な甘みが、口の中で混じり合う……。

満天星一休(どうだんいっきゅう)の「杣の木洩れ日」


満天星一休の「杣の木洩れ日」
満天星一休の「杣の木洩れ日」
(画:森下典子)

 そんな柿好きの私に、友だちが満天星一休(どうだんいっきゅう)の「杣(そま)の木洩れ日」という贅沢なお菓子を教えてくれた。「杣」とは、樵のことだという。
 きれいな包装の中から出てくるのは、むっちりとした見事な干し柿である。まわりには白い果糖がたっぷりと噴いている。かぶりつくと、干し柿特有のねっとりとした食感の中から、もう一つの食感と味が現れる。
 なんだろう、この味は……。もそもそと粉っぽくて、素朴な甘みがある。どこかで知ってる秋の味だ……。そうだ、きんとんだ。栗をつぶしたきんとんである!
 干し柿のねっとりとした濃厚な味と、栗きんとんのもそもそとした素朴な甘みが、口の中で混じり合う……。
 ねっとりともそもそ。濃厚と素朴が練り合わされる。すると、底知れぬコクの深さに陶然となった私の頭の中で、静かに静かに、映画「みじかくも美しく燃え」のテーマ音楽が流れ始める。

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