身近な生活の中のおいしさあれこれを1ヶ月に1度お届けします 森下典子
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2006年3月―NO.41
  3

純粋に「柿の種」だけに向き合い、 歯ざわりを頭蓋骨に響かせ、
それが次第に激しく、 とりつかれたように熱狂していく……

浪速屋製菓の「柿の種」


一杯呑むときも、合う…
この缶が好きなんです
(画:森下典子)

 「柿の種」は、私にとって「禁断のスナック菓子」だった。いったん食べ始めたら、やめることができない。いつも食べ過ぎた。
「もう、やめる」
 と、心に堅く誓うのだけれど、あの缶の絵を見ると、どうしても手を伸ばさずにいられないのである。
 「柿の種」には、ピーナッツの混じった「ピー入り」もあるが、私はあくまで、ピーなしの「元祖 柿の種」が好きだ。
 何粒かに1粒の割合でピーナッツが入っているだけで、リズムが乱れ、気が散るのである。だから、ピーナッツ入りだったら、私は先にピーナッツだけを拾って、全部食べてしまう。
 それから心置きなく「柿の種」だけに専念するのである。
 ポリポリポリポリ……。
 純粋に「柿の種」だけに向き合い、歯ざわりを頭蓋骨に響かせ、それが次第に激しく、とりつかれたように熱狂していく……。
 それは「柿の種」だけの、1つの境地ではあるまいか?

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