身近な生活の中のおいしさあれこれを1ヶ月に1度お届けします 森下典子
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2006年7月―NO.45

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どこのお店のカレーよりも「ボンカレー」が好きだった。
舌に「ボンカレー」の味が染み付いた。

大塚食品の「ボンカレー」


松山容子さんから松坂慶子さんに変わって・・・
松山容子さんから松坂慶子さんに変わって・・・
(画:森下典子)

 この間、スーパーのレトルト食品コーナーで、立ち止まった。そして、あるパッケージに見入ってしまった。
 「ボンカレー」の箱が、松坂慶子になっていた。縞のきもので、小首をかしげ、なんとも昭和レトロな雰囲気で、にっこり微笑んでいる。
 一見、元祖「ボンカレー」の復刻版のようだったが、実は新製品。その名も、「ボンカレークラシック」という。
「へぇ〜っ」
 なんだか、しみじみ時代の流れを感じてしまった。
 「ボンカレー」を初めて食べたのは、私が中学に進学した年。それは、人類にとって記念すべき夏だった。アポロ11号が月面着陸に成功した夏だったのだ。
 朝から晩まで、テレビは特番を組んで、月からの中継を放送していた。宇宙飛行士が月面をゆっくりとジャンプしながら歩く姿が映し出された。
 映像はどうということはないけれど、
「自分は人類の歴史的一瞬に立ち会っている」
 という思いに興奮したのを覚えている。5歳だった弟は、
「ぼく、大きくなったら、アームストロング船長になる!」
 と、小鼻を膨らませた。
 その歴史的興奮のさなか、母が「ボンカレー」を買ってきたのだ。パッケージには、いまや「ボンカレー」の古典となった、あの松山容子さんの笑顔があった……。

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