2007年3月―NO.53
この味は、忘れがたい。 ヘラにこびりついたごはんまで、歯でこそいで食べたことは言うまでもない 木やだんごの「五平餅」と木曽ごへ〜本舗の「ごへ〜餅」
ごちそうさまでした! (画:森下典子)
その思い出は、ずーっと私の記憶に残っていた。時々、「あぁ、五平餅、食べたいなぁ」と思っていたけれど、東京、横浜のデパ地下では「五平餅」を売っていないのである。 そこで今回は調べた。五平餅は、元々、木曽、伊那、岐阜、三河、南信濃あたりの郷土料理だという。こういう時、インターネットは便利である。取り寄せに応じてくれる店を探した。 「はい、発送してますよ」 岐阜県中津川市にある「木曽ごへー本舗」と、岐阜県高山市桐生町にある「木やだんご」の両店に送ってもうことにした。 「木曽ごへー本舗」の「ごへーもち」は、細い串に、丸い団子が3つずつ刺さった「みたらし団子」状。「木やだんご」の五平餅は、高校生の時に妻籠で友達が買ったのと同じ、平べったい小判型だった。(どちらも、自分で焼いて食べるように、タレは別容器に入っている。) さて、これらを弱火で十数分、ふっくらするまで焼き、それから別容器のタレを塗る。 「木曽ごへー本舗」のタレは、醤油ベースでクルミ、落花生、胡麻をたっぷり加えたもの。 「木やだんご」は、味噌ベースのタレと、「あぶらえ」(エゴマ)という2種類がある。 これらを塗って、中火で数分……。たちまち、あの香ばしい匂いが漂い始めた。 この味は、忘れがたい。ヘラにこびりついたごはんまで、歯でこそいで食べたことは言うまでもない。