身近な生活の中のおいしさあれこれを1ヶ月に1度お届けします 森下典子
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2007年4月―NO.54

  3

いっぺん食べたら忘れられない、強烈なインパクトのおせんべい
うまい餡子を食べた後は、お茶の味が体にしみ入る気がする

柴舟小出の「柴舟」と中田屋の「きんつば」


木やだんごの「五平餅」
中田屋の「くるみきんつば」

(画:森下典子)

 さっそく、その日の夕食の後、丁寧に煎茶を入れて、「柴舟」と「きんつば」「くるみきんつば」を食卓に並べた。
 大きさも程よい「きんつば」である。白い薄皮を透かして、赤紫色の餡子色がうっすら見える。手で割ると、薄皮が破れ、中から大粒のあずきが現れた。粒々が壊れず、濡れたようにつやつや光っている。
 一口食べて、ハッとし、また粒々を眺めた。塩加減がすばらしい。甘さがまろやかで深みがある。皮が柔らかく煮えている。
「ああーっ!」
 と、思わず声が出た。なんだか、「これだ!」と、膝を打ちたいような気持ちになった。
粒餡を寒天で四角く固めた周りに、薄い生地を塗って焼いた「きんつば」……。粒餡のおいしさを、そのまま閉じ込めた和菓子。シンプルだからこそ、技が問われると言うことが、味で伝わってきた。
 続けて、「くるみきんつば」に手を伸ばした。割ってみると、心なしか、餡の色がさっきと違う。「きんつば」の餡は、赤紫色に見えたが、「くるみきんつば」の餡の色は青紫に見える。
こちらはこし餡。そのこし餡に、大粒の胡桃がごろごろと入っている。
 一口齧る。ざりっ、ざりっ、とくるみの歯ざわりがして、ぷ〜んと、香ばしさが鼻に抜けた。くるみの味とこし餡が交じり合い、なんとも滋味豊かな風味がする。
 ここで、お煎茶を一口飲む。うまい餡子を食べた後は、お茶の味が体にしみ入る気がする。
「ああーっ!」
 また、つい声が出た。
  中田屋の「きんつば」は、私にとって発見だった。これだから、物産展って、楽しい!

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