身近な生活の中のおいしさあれこれを1ヶ月に1度お届けします 森下典子
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2007年12月―NO.62

  3

どこをとっても本格的である。
これがあれば私はもう、冬の夜、「鍋焼きうどん」食べたさに、悶えることはない。

キンレイの「鍋焼うどん」


キンレイの「鍋焼うどん」
キンレイの「鍋焼うどん」

(画:森下典子)

 「鍋焼きうどん」といえば、このごろ私は「キンレイの鍋焼うどん」にハマっている。なんでも25年も前からあるコンビニのロングセラーだそうだが、この冬、初めて知った。
 アルミホイルの鍋に、出汁もうどんも具も入っている。水さえ加える必要はない。ただ火にかけるだけで、ジュジューと音がして、やがてぐつぐつと煮えると、湯気が立ち、本格的な「鍋焼うどん」ができあがるのである。
  この味が、なんと、下手なうどん屋よりうまいのである。即席くささなど一切ない。出汁の味が実にいい。うどんはしこしことコシがある。椎茸には見事な味が滲みている。海老はプリッと新鮮である。お麩、油揚げ、ほうれんそう、にんじん。どこをとっても本格的である。ふうふう湯気を吹きながらすすると、芯からあったまる。これがあれば私はもう、冬の夜、「鍋焼きうどん」食べたさに、悶えることはない。

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