2008年3月―NO.65
優しく滋味豊かな、 お豆腐屋さんの良心の味がした。 鎌倉小町の「豆乳パウンドケーキ」
鎌倉小町の「豆乳パウンドケーキ」 (画:森下典子)
次の時は、レモン味のパウンドケーキを買った。これもレモン味と豆乳の風味が混じり合って、どことなくヨーグルトっぽい香りになり、さわやかだ。 しっとりとした生地に、豆本来のほのかな甘みと風味があって、体に優しくしみいる。 すっかり「鎌倉小町」の焼き菓子のファンになった私は、何人かの知人に、あのビニール袋入りのマフィンをお土産やプレゼントにあげた。すると大抵、「あら、ありがとう」と言った相手の顔に、(でも、おいしくなさそう……)という困惑の表情が浮かぶ。そして、後日、 「あのマフィン、おいしいのね」 という意外そうな声を聞くことになった。 残念なことに、その後、横浜三越が閉店してしまったので、あの「豆乳マフィン」や「豆乳パウンドケーキ」は、なかなか食べられなくなってしまったが、鎌倉に行くたび必ず、小町通りの路地の奥にある小さな本店で買って帰る。 つい先日も、クルミ入りとレモン味のパウンドケーキを買って食べた。久しぶりに食べた豆乳パウンドケーキは、優しく滋味豊かな、お豆腐屋さんの良心の味がした。