2010年10月―NO.95
むっちり、もっちりと噛みごたえがあり、西京味噌の香ばしい甘みやほのかな塩気、 ゴマの風味が口の中で混じり合って、優しさに包まれ、うっとりとなった。 松屋常盤の「味噌松風」
(画:森下典子)
帰りの新幹線の中で、3人でお茶を飲みながら、味噌松風と一緒に買った「きんとん」をさっそく食べた。松屋常盤の「きんとん」は瑞々しく、柔らかくて、箱を平らに持っても、どうしても寄ってしまう。お茶の世界では、 「松屋常盤のきんとんをお箸で挟めるようになったら一人前」 と、言われているのだそうだ。 口に入れた途端、私たちはあまりのおいしさに泣き顔みたいになった。 それから、紙袋に手を突っ込み、味噌松風の切れ端を齧った。昭和天皇も、この切れ端を召し上がっただろうか……。ちゃんと切り分けた味噌松風もおいしいが、なぜか切れ端は一層香ばしく、優しい味がした。